知るUCHU wagashi vol.2

UCHU wagashiの世界観をつくるひとやモノについて綴ります。

<第2回>UCHU wagashiというアイディア

前回に引き続きUCHU wagashiの生みの親、代表の木本勝也に振り返ってもらいます。30代になり、デザイナーとしての危機感を感じていました。

ー何からはじめたんですか?

木本:日本で東京じゃなければ最先端のものを作れないというのはおかしいんじゃないかなと思っていて。made in Kyotoで世界に通じるものをつくりたいと思いました。


木本:伝統産業に着目しました。あとは観光客も重要だと考えました。そこで手にとっていただきやすい菓子に興味をもちました。

ー甘いものが好きだったとか?

木本:実は僕は甘いものはあまり食べないんです。個人的な好みというよりも、ビジネスとして自分の強みを活かせそうだと考えました。

ー甘いもの、食べないんですか?驚きです。

木本:はい、ケーキなども買ってまで食べる事はないです。でも京都のお菓子を調べていく中で、茶席菓子の美しさや素晴らしさを知り、食べる人ではなく作る人として強い興味を持ちました。

ー繊細で美しいものが多いですよね。

木本:はい、商品は本当に素晴らしいです。だけど店舗を何件も見てまわっていたらなんだかモヤモヤしてきて。

ーモヤモヤ?

木本:僕はずっとデザインの仕事をしていたから俯瞰してものを見る癖があるんですね。

ー俯瞰ですか?

木本:はい。老舗って絶対的な存在感があるじゃないですか。歴史や技があって当たり前の世界だし、お客さんも安心感を持って接しますよね。だけど僕はデザイン的視点で見ているのでその辺は脇に置いて観察するんです。「僕だったらどうするかな」と、考えながらお店をたくさん見てまわりました。

ーいろいろ観察を続けるなかで、どうやって木本さんなりのイメージを固めたんですか?

木本:あるとき京都駅の和菓子のお土産が買えるようなショーケースを眺め歩いていたときに、閃いたんです。

ー閃き。

木本:ショーケースを眺めながらふと「ここにもっと彩りがあったらな」と思って。そこから「マリメッコが箱をつくったら」という光景が頭のなかに浮かんだんです。そうしたらものごくワクワクして。その時にワクワクすることって大事だな、これだなと思いました。そして「人をワクワクさせて幸せにする」というコンセプトが浮かびました。

ー心温まる話ではないですか、たしかにワクワクしている時は幸せです。ところではじめから落雁をつくると考えていたんでしょうか。

木本:初めは自ら製造するということは考えていませんでした。どちらかといえば自分の領分はディレクションだと思っていたので。

ー今までやってきたことの延長線上で考えたんですね。

木本:僕のなかでは「こうやったらうまくいく」という未来が見えているんだけど、何者でもない僕が受け入れてもらえるほど甘くはありませんでした。

ー素人が聞いてもそのハードルの高さは想像できます。逆にそこに挑む木本さんが凄いなと。

木本:なのでいよいよ自分でやった方が、困難だけど最短だと考えました。


ーそれで製造から手がけるようになるんですね。落雁を選んだのはどうしてですか?

木本:落雁を選んだのは自分を発揮しやすいからです。木型を作れば機会的に作れるところが魅力的でした。そこで落雁のブランドとして展示会をまずやろうと考えました。

ー落雁をつくるのはスムーズにいったんでしょうか?

木本:やはり信用を得るまでは材料も資材も手に入れるのは大変でした。当時は新しいチャレンジをする人間が非常に珍しかったのだと思います。製造もデザインも自分でやって、京都では有名なデザインカフェで展示会をやりました。その展示会がUCHUwagashiの記念すべきスタートとなりました。


ー紆余曲折の末、UCHU wagashiが登場しました。そして和菓子のブランドとして10年以上続くブランドになりましたね。

木本:嬉しいことです。だけど和菓子の世界ではまだまだ若い存在です。UCHU wagashiはデザイン性を話題にされることがあるけれど、僕としてはそれはあくまで手段。それをきっかけに人に手に取ってもらって、僕たちは本質を提供していきたいと思っています。


ーUCHU wagashiのコンセプト、「目指しているのは今の和菓子をつくっていくこと、それが100年後あたらしい文化になるのだと思います」は、こういった思いからきているんですね。お菓子って食べるのはもちろん嬉しいことだけど、贈る人のことを考えたり、選んだりすることも幸せのひとつですよね。UCHU wagashiでは季節にあった味やパッケージも提供しています。お菓子をきっかけに話を弾ませてみませんか。次回もおたのしみに。


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